初めてのフィルム


私は1997年にニューヨーク大学の映画学校へ映画制作の勉強に行きました。 この歳にして毎週一本のショート・フィルムを制作してクラスで発表するという過酷な課題を背負った毎日は試練の連続でした。 そんなある日、市内の本屋さんを散策していた際にとても心地よい音楽が耳に入ってきました。店員に聞いたらマーク・アントワンという初耳のアーティストでしたが、とても気に入ったので購入して毎日のように聴いていました。そうすると色々なビジュアル的インスピレーションが沸いてきたのです。 それから数日後にユニオン・スクエアでタクシーを拾うと何と運転手が写真家だったのです。同類の匂いを嗅ぎつけてきた彼の方から自分の作品集を見せてくれたのですが、そこには年中ニューヨークの街を走り続けているタクシー・ドライバーにしか撮れないニューヨークの表情をとらえた素晴らしい写真がたくさんあったのです。四季を通した日中から深夜にかけて、雨の降る日も雪の降る日もすべて彼のバカチョン・カメラを通して美しいモノクロ写真として記録されていました。 この2つの出会によって6分のショート・フィルムを作ってみることにしましたが学校の光漏れするボロカメラ、そしてコンピューターを一切使わず手作業でフィルムを切って貼り付けるというアナログな作業によって連日徹夜の作業となってしまいました。ノンリニア編集が当たり前になってしまった今日にこのフィルムを観ると編集のぎこちなさが残りますが、やはり良い音楽とパッションを持った人のライフスタイルというものには感動します。



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David Bradford's book
"Drive-By Shootings"